Kawa-Law通信

2016.08.22更新

≪問≫

 あなたは、知人が運転する車に同乗中に事故に遭い、入院1ヶ月、通院3ヶ月を要する怪我を負いました。

 交通事故の状況が次のようなものであった場合、あなたは、誰に対して、どのような請求ができるでしょうか。

(1)運転者がハンドル操作を過って、道路脇の電柱に衝突した場合

(2)運転者が青信号で右折する際、対向車と衝突した場合(運転者の過失は7割、対向車の過失は3割)

(3)運転者が、赤信号に従って停止している先行車に追突した場合

≪答≫

(1)あなたは、運転者である知人に、自分が被った損害(治療費実費や休業損害、慰謝料等、以下同じ)の賠償を請求することができます。

(2)あなたは、運転者である知人と対向車の運転者のどちらにも、自分が被った損害の賠償を請求することができます。仮に、適正な損害賠償額を200万円とした場合、加害者の一方に支払能力がなく、50万円しか賠償してもらえなかった場合、もう一方に対して残り150万円の賠償を求めることも可能ですが、結果的に両者から支払いを受ける総額については、200万円を超えることはできません。

(3)あなたは、運転者である知人と先行車の運転者のどちらにも、自分が被った損害の賠償を請求することができますが、先行車の運転者は、自分に過失がないことを主張立証すれば、損害賠償義務を免れることができます。

 

 上記(2)の事例のように、ひとつの加害行為に複数の当事者が関与している場合を「共同不法行為」といい、民法719条1項は、行為者の各自が連帯して損害賠償義務を負うことを定めています。被害者は、上記のとおり、加害者のいずれに対しても、自分が被った損害額に達するまで、賠償を求めることができます。複数の加害者がいる場合に、その関与の程度や支払能力は様々ですが、民法は、そのような不確定な事情によって、被害者の損害賠償請求権が制約を受けることがないように、このような規定を設けたのです。

 ところで、上記(2)の事例で、対向車の運転者は、自分の過失が3割しかないのに、あなたに200万円の賠償を支払った場合にどうすればよいのかというと、あなたが同乗する車を運転していた知人に、賠償額の7割分に相当する140万円を請求することができると考えられています。これを「求償」といいます。

 

 ここからが本題です。

 不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」(最判昭和48年11月15日 民集27巻10号1323頁)をいうのですが、配偶者の一方が単独でできることではなく、必ず相手方となる異性が関与することになりますので、これも上記(2)の事例と同様の共同不法行為の一種です。

 法律の世界では、故意だろうと過失だろうと、他人の権利利益を侵害した場合 (不法行為)の損害賠償請求に関する考え方は同じですので、不貞行為に基づく損害賠償(慰謝料)請求については、上記の交通事故の事例で、車に同乗している状況を婚姻関係に、怪我を負った状態を精神的苦痛を受けたことに、それぞれ置き換えれば、理解は容易であろうと思われます。

 

 まず、損害賠償の金額を決める最も大きな要素は、どのような損害を被ったかです。上記(1)ないし(3)の事例で、事故態様はそれぞれ異なりますが、同じく入院1ヶ月、通院3ヶ月の怪我を負ったのであれば、単独事故か他車が関与しているかといった事故態様にかかわらず、被害者に対する賠償金の金額は基本的に変わりません。また、入院1ヶ月、通院3ヶ月の怪我と比較して、通院1ヶ月のみの怪我の方が賠償額が低いのはご理解いただけると思います。

 同様に、不貞行為の場合も、その結果として、婚姻関係が破綻し、「離婚」という選択に至ったのか否かが、慰謝料の金額を決める最も大きな要素です。そのほか、婚姻期間や不貞関係が続いていた期間も、慰謝料の金額を決める要素となります。

 

 次に、共同不法行為においては、複数の賠償義務者がいますので、同時に、または別々に、被った損害の総額に達するまで賠償請求することができます。しかし、それは、獲得できる金額が何倍かになるということではなく、複数の賠償義務者から回収できる金額は、実際に被った損害額を上回ることはありません。

 不貞行為が原因で夫婦関係が破綻した場合、配偶者の一方が負うべき賠償と不貞行為の相手方が負うべき賠償との関係も、上記と同様で、複数の当事者がいるから単純に賠償額が増えるというものではありません

 

 さらに、不貞行為の当事者の一方が一定の賠償義務を果たした場合に、他方との関係はどうなるかという問題があります。この点、不貞行為を行った配偶者との間で示談(離婚協議)が成立して、現実に支払われた金額を超える損害賠償義務を免除しても、不貞行為の相手方に対してさらに損害賠償を請求することができるとした裁判例(最判平成6年11月24日 集民第173号431頁)があります。逆もまたしかりで、不貞行為の相手方と示談が成立して、現実に支払われた金額を超える損害賠償義務を免除しても、不貞行為を行った配偶者に対してさらに損害賠償を請求することは可能です。

 当事者の一方は赦すが、他方は赦さないという使い分けは否定されないということです。

 

 そうなった場合、おさまらないのは、自分の責任割合を超えて賠償金を支払うこととなった当事者ですが、上記のとおり、他方に対して「求償」が可能です。

 不貞行為の当事者の一方が賠償義務を果たしたからと言って、他方は安泰ではなく、結局のところ、適正な責任割合において賠償義務を負担せざるを得なくなるということです。

 

 ただ、難しいのは、交通事故の場合は、損害賠償額が状況に応じて相当厳密に積算でき、過失割合も定式化されているのに対して、不貞行為の場合には、全体の賠償額をいくらと見るのか、当事者の責任割合をどう考えたらよいのかが、かなり漠然としていてわかりづらいという点です。

 信頼していた配偶者に裏切られたとか、都合良く利用されただけではないかとか、損害賠償請求する側もされる側も、とかく感情的になってしまいがちではありますが、どのような請求が可能なのか、どこまで応じなければならないのか、上記のような「共同不法行為」の性質に立ち戻って、冷静に考えてみることが肝要かと思います。

 

投稿者: 川口法律事務所

2015.04.02更新

 配偶者と一緒に暮らすのが「もう耐えられないから別居したい」、配偶者から突然「別居したいと言い出された」、あるいは、出張に行っている間に配偶者が「子供を連れて出て行ってしまい、どこにいるのかわからない」、などという相談を受けることが、増えているような気がします。

 長年会話らしい会話もなかったとか、話し合ったって無駄だというような理由付けはそれぞれあるのでしょうが、そもそも夫婦には同居義務(民法752条)があり、正当な理由なく同居に応じないことは、「悪意の遺棄」(民法770条1項3号)として、それ自体が離婚の原因となる可能性もあります。
 もちろん、配偶者からの暴力(いわゆるDV)があって、生命や身体に重大な危険が生じるような深刻な事案では、「今すぐ逃げろ」というのが唯一かつ絶対的な正解であり、そうでない場合でも、同居を継続するようには求め難い事案もあるのですが、理由も告げられないまま突然に別居ということになれば、相手方の感情は相当に厳しいものとなります。
 ましてや、別居した配偶者から婚姻費用(生活費)を支払うように求めていたり、子供の親権の帰属や面会交流について争いがあったり、というケースでは、「勝手に出て行っておいて、何を言うのだ」という悪感情が、いつまでも尾を引くことになりかねません。

 もっとも、円満に行っていないこと自体は、夫婦のどちらもが多かれ少なかれ認識しているはずだから、いずれ別居は避けがたいのであり、まずは一定の距離を確保してから、夫婦の関係の解体、清算にとりかかるべきだ、という考え方もありうるかと思います。
 「女性のための離婚相談」を標榜する法律事務所の中には、「弁護士に依頼すれば、相手方と直接話さずに、スムーズに離婚を進めることができる」などと述べる向きもあるようですが、果たしてそのような対応がベストなのかは、一概には言えません。

 「去る者追わず」というのが私個人のポリシーではありますが、そうはいかないのが現実。
 ただ別居できればよいというのではなく、離婚するのが究極の目的なのであれば、少なくとも、かくかくしかじかの理由でもう一緒にはやっていけない(だから別居する)、その先のことはこのように考えている、という宣言だけは自分の肉声で相手方に伝えておかないと、その先の展開がなおさら困難になるのではないか、というのが私の経験的な感想です。
 当事務所としては、離婚に関する相談は、男女比がいずれも拮抗する状況ですので、そのような考え方はお伝えしながらも、それぞれの事案について相談者の気持ちを尊重しつつ、できる限り感情的な対立や経済的なインパクトが少なくなるような進め方が提案できるよう、心がけているところです。

投稿者: 川口法律事務所

2014.07.04更新

 ワイドショーは某女優のスピード離婚を伝えていますが、最近、当事務所でも、ご相談をいただいてから約1ヶ月で協議離婚が成立したという事案がありました。

 ご相談をいただいたのは別居直後でしたが、子供がおらず、復縁の可能性がないことについては双方とも一致していたこと、相手方にも弁護士が付いたので、財産分与と慰謝料に問題を絞り込んで、感情的な対立を持ち込まずに集中的な議論ができたことが、短期間で離婚が成立できた要因です。

 別居することになっても、結婚している限り、配偶者を扶養すべき義務があります。
 別居後に女性側から生活費(婚姻費用)を支払って欲しいと要求され、拒否したところ、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求」の調停を申し立てられたとしてご相談に見えられる男性が多いのですが、そうなってしまうと、離婚に向けた協議も調停を介してでなければ進みにくくなります。
 調停はもちろん、当事者同士の話し合いでは解決できなくなった問題を、段階的に処理していくための有効な手段なのですが、調停が成立するまでには通常、3回ないし4回程度の期日を重ねることとなります。月1回程度の間隔でしか期日が入らないため、申立から成立まで、最短でも4ヶ月から半年近くかかってしまうことになります。

 感情的な対立が深刻になってしまう前に、ご依頼をいただければ、比較的短期間で協議離婚が成立するかも知れません。
 どうかお気軽にご相談ください。

投稿者: 川口法律事務所

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